アイデア事例

Engineering

 アイデアについて自分なりにまとめたものを書いていきたいと思います。アイデアの創出方法には「オズボーンのチェックリスト」というものがあります。ただ、「オズボーンのチェックリスト」は、一つ一つの事例が簡潔過ぎて分かり難いものが多かったと思います。

 実例を上げていった方が分かりやすいと思い実例を上げたり、エピソードを交えて説明していきたいと思います。

 主に工業/工学的な物が多くなるとは思いますが、工業/工学的な物だけにこだわらず、幅広い観点からアイデアに関する事例をまとめていければと思います。

反対・逆さまにしてみる (あるいは両方搭載してみる)

 これは工業/工学分野でよく見られる例だと思います。

・ギターのペグ部分をブリッジ側に持ってくる(実例 : スタインバーガー)

 洋の東西を問わず、弦楽器の種類は数多くあります。(エレキ/アコースティック)ギター、バイオリン、マンドリン、琵琶、三味線、胡弓、三線などです。

 これらの弦楽器には共通した特徴があります。ペグなどの弦(ストリング)のテンションを調節する機構が演奏者(プレイヤー)から見て、左側にあるという点です。

 これは、右手で弦を弾いて、左手で調弦するが合理的だから、自然と色々な弦楽器でそのような構造になるのでしょう。

 しかし、調弦は演奏前にやってしまえば、演奏中にやることはあまりありません。調弦時の不便ささえ我慢すれば、弦のテンションを調節する機構はペグ側にあっても、ブリッジ側(アコースティックギターの場合は、サウンドホール側、ギターのボディ側)にあっても同じとも言えます。

 このように弦のテンションを調節する機構(ノブ)をブリッジ側に持ってきて、ヘッド構造を無くしたのかスタインバーガー社のエレキギターです。このように、ヘッドを無くしてノブをブリッジ側に持ってくることでギターのデザインの自由度が格段にあがりました。

 スタインバーガーの実機の写真は著作権の関係で掲載できず、図をPPTで手書きで描いたため下手な図になってしまいましたが、検索して実物写真を見てもらえれば、ギターやほかの弦楽器と比べれば非常にデザインが洗練されたものになっいるのがお分かりになるかと思います。ぜひ、検索して実物写真を見て頂きたいと思います。 

 ちなみに、スタインバーガー社のエレキギターは、ブリッジ側から調弦しやすいように、ボディのブリッジ部がえぐるようなデザインになっています。

・カメラのフォーカス機構をレンズ側ではなくカメラボディ側に持たせる(実例:CONTAX AX)

 昔ながらのレンズ交換式の一眼レフの図を下記に示したいと思います。

 そして、実際に写真を撮影する際には、ミラーが跳ね上がりイメージセンサー(フィルム)に画像が照射されて撮影されます。

 結局、写真のピントというのは、レンズとイメージセンサー(フィルム)間の距離で決まってきます。

 ちなみに、被写体が風景写真のようにピントが「無限遠」の場合、レンズとイメージセンサー(フィルム)間の距離が近くなり、人物撮影や物品を撮影したりと、ピントが比較的近距離の場合、レンズとイメージセンサー(フィルム)間の距離が遠くなります。

 カメラ全般に言えることですが、このレンズとイメージセンサー(フィルム)間の距離を調整する機構は、レンズ側に持たせている場合がほとんどです。

 しかし、ピントを合わせるのが、レンズとイメージセンサー(フィルム)間の距離だとするならば、その距離を調整するのに、レンズ位置を固定してカメラボディ側を動かして、調整してもいいことになります。

 それを実現して実際に販売したのが、CONTAX AXという機種です。CONTAXというブランドはあまり聞いたことがないと方もいらっしゃるかも知れません。メーカーとしては、京セラが販売していたカメラブランドです。

 残念ながら、現在はカメラ部門からは撤退してしまったようですが、以前は、カメラ・ボディがCONTAXブランド、レンズがカール・ツァイス・ブランドで高級カメラブランドとして市場では、一定の存在感がありました(京セラのカメラ開発については、コラムを参照下さい)。

 簡単に図示すると、カメラ・ボディを移動させて、ピントを合わせる機構は、下図のようになります。

・一眼レフカメラ(ミラーレス一眼カメラ)のバヨネットの爪を外側に向ける(実例:シグマ SD-300)

 また、レンズ交換式の一眼レフの例になりますが、ミラーレス一眼にも当てはまります。現在販売されているレンズ交換式のカメラのほとんどが、マウント部(レンズとカメラボディとを連結する部分)が内3爪バヨネット形式のものだと思います。

 しかし、円筒形のレンズを直方体のカメラボディに連結させる方法としては、①小口径のレンズをボディ側にねじ込むという方法と、②大口径のレンズを小口径のスタッドのようなものが付いたボディに連結させるという方法もあります。いわば、ボディ側をレンズにねじ込むようなイメージです。

 下記は、円筒形のボルトとナットの中をパイプ状にしたレンズを模したものを、ナットにはめ込むイメージで「内3爪バヨネット」「外3爪バヨネット」をイメージしたものです。

 「外3爪バヨネット」の場合の弱点は、「内3爪バヨネット」に比べて、コンパクトさで負けてしまって大きくなってしまう点です。

 しかし、『理論的には「外3爪バヨネット」方式は成り立つが製品化されることがあるのか?』と疑問に感じると方がいると思いますが、実際に「シグマ」という光学機器メーカーから「SD-300」という機種で採用されて発売されていました。

 厳密には、「内3爪バヨネット」「外3爪バヨネット」を同時に実現したマウント仕様でした。

 「SD-300」のコンセプトとしては、比較的小型のレンズ(300mm以下)に対しては、コンパクトに設計できる「内3爪バヨネット」に対応させて、大型のレンズ(300mm F2.8 (いわゆるサンニッバ))以上にレンズに対しては、レンズとカメラボディとの剛性が確保できる「外3爪バヨネット」で対応するつもりだったようです。

 しかし、「外3爪バヨネット」対応レンズは発売されなかったようです。理由は、「SD-300」の後継機では、「外3爪バヨネット」が無くなって、「内3爪バヨネット」だけになってしまった点にあるようです。

 たまたま「シグマ」の開発員の方に話を聞ける機会があったので、どうして「外3爪バヨネット」が無くなったのか聞いてみました。一眼レフには防塵規格というのがあって、細かい粉塵などがカメラ内部に入りこまないようにする必要があります。

 その規格を実現するためには、カメラの構造をできるだけ密にする必要があります。そのとき、「外3爪バヨネット」に対応したマウントだと、どうしてもその防塵規格をクリアする製造が難しく、「外3爪バヨネット」を諦めざるをえなかったそうです。

・オートフォーカスレンズ(以下、AF)のレンズ駆動用モータをレンズ側にもたせる(実例:Canon EOSシリーズ)

 1985年にミノルタによって、一眼レフのAFシステムが発売されて世界に衝撃を与えました。その時のレンズ駆動方式ですが、

・裏面照射CMOSイメージセンサー

・オートマチックピストルのスライド部

横の物を縦にする(縦の物を横にする) 

・横走りフォーカルプレーンシャッター vs 縦走りフォーカルプレーンシャッター (事例: 昔のカメラ vs 今のカメラ)

 カメラのシャッター機構には大きく分けて、「レンズシャッター」「フォーカルプレーンシャッター」という2種類があります。「フォーカルプレーンシャッター」は高速時のシャッタースピードにも対応できるということで、一眼レフのカメラには、「フォーカルプレーンシャッター」が搭載されています。

 この「フォーカルプレーンシャッター」も色々と進化の過程を経て、「横走り方式」から「縦走り方式」と変化して来ているので、その変化の意味を説明したいと思います。

 まずは、「フォーカルプレーンシャッター」について説明したいと思います。

・弦楽器の演奏でピッチを変える方法を縦から横にかえる(実例:バイオリン vs エレキギター)

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