分子軌道法

Engineering

この記事は、「絶対わかる電気化学 絶対わかるシリーズ 齋藤 勝裕 著 講談社」を参考にさせて頂いています。

金属の分子軌道

 1つの分子軌道には、2つの電子しか入ることが出来ません。しかし、分子には多くの電子があります。これらの電子を収容するためには多くの分子軌道が必要となります。ところが分子軌道の取りうるエネルギーは最低と最高が決まっています。必然的に、電子の多い分子の分子軌道はエネルギー間隔が狭くなることになります。

 金属結晶は多くの金属原子が金属結合で結合したものであり、一種の分子と見ることができます。この場合、無数ともいえる分子軌道が必要となり、分子軌道のエネルギー間隔はほとんど0となり、分子軌道はエネルギー的に融合します。このようにしてできた融合分子軌道をエネルギー帯、エネルギーバンドといいます。

 そしてHOMOとLUMOの間にはエネルギー差が無くなってしまいます。このような境界をフェルミ準位といいます。

[OT]分子軌道法によって電子構造(電子のエネルギー順位)が「価電子帯」「伝導帯」「フェルミ準位」等に定義されます。このモデルは原子中の全ての電子を対象にしたモデルのようです。

価電子帯と伝導帯(1)

 フェルミ準位以下の軌道には電子がいっぱいに詰まっているので価電子帯といいます。ここの電子は静電気反発等の影響でスムースに移動することができません。渋滞道路の自動車のようです。電子が自由に移動して電流がながれるためには、電子はフェルミ準位より上の軌道に移動しなければなりません。ここには電子が少なく、高速道路のように自由に移動できます。そこで、この軌道を伝導体といいます。

 すなわち、金属が電気の良導体であるのは価電子帯と伝導帯の間にフェルミ準位があり、エネルギー差がないからです。つまり、金属ではわずかのエネルギー(電位)差でもあれば価電子帯の電子は伝導体に移動することができるのです。それに対して絶縁体では価電子帯と伝導帯の間に大きなエネルギー差があるので電子は伝導帯に移動できないのです。多くの有機物が絶縁体であるのはこのような理由からです。

価電子帯と伝導帯(2)

金属結合は「金属腐食」(金属腐食)の記事でも説明しましたが、金属結合は共有結合の一種で自由電子を金属原子群全体で共有しています。その自由電子は原子の最外殻電子である価電子です。

 価電子(自由電子=共有結合電子)は価電子帯に存在します。価電子帯と伝導帯の間には、禁制帯が存在します。金属の場合、価電子帯が全部埋まっておらず、空準位があります。この空準位を価電子が移動するため金属に導電性があるかいう説明もあります。

伝導帯を英語でconduction bandといい、価電子帯を英語でvalence band(ベイレンス バンド)といいます。

[OT]このモデルは、価電子=共有電子=自由電子を対象としたモデルのようです。

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