小説「地面師たち」のレビュー・書評

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(※内容について本文で一部言及しています。未読の方はご注意下さい。)

 今回の書評は「地面師たち」新庄 耕 著 集英社刊です。

 今回の小説のレビューは、2024年7月25日にNetflixで公開されて話題になった「地面師たち」の原作小説を取り上げます。

 Netflixの配信ドラマは見ていないので、原作のレビューをしたいと思います。配信ドラマの評判はかなりいいらしいでいずれ鑑賞する機会があればドラマのレビューもしようと思います。

 これは、2017年に起きた「積水ハウス地面師詐欺事件」をモデルにしています。2024年の流行語大賞でも、ドラマの中でピエール瀧さんのセリフである「もう、ええでしょう」が話題なったので覚えておられる方もおられるのではないでしょうか?

小説について

 主人公は辻本 拓海という30代の男性地面師です。かつては、親族が経営する医療機器や医療消耗品を扱う専門商社に勤務していましたが、医療ブローカーにはめられ、その会社は倒産してしまいます。そして拓海の父親は家に放火してしまいます。

 たまたま、拓海の実家に来ていた拓海の妻と息子と拓海の母親は巻き添えを受けてなくなってしまいます。そのような壮絶な経験をしたことから、拓海はまだ30代でもあるにもかかわらず、白髪になってしまいます。

 地面師たちは、それぞれ得意とする担当分野を持ってチームを作っています。拓海ももちろんチームを組んでいます。

 まずは、相手の前面に出る交渉役は、拓海の役です。詐欺のターゲットを情報を調べて来るのは、「図面師」の竹下です。なりすまし役を見つけてきて、演技指導をする「手配師」の麗子。偽造書類を手配するのは「法律屋」と呼ばれる元司法書士の後藤です。そして、チームを束ねるのが「地面師」ハリソン山中という布陣です。

 一方、このチームが手掛けるのが、中小型案件の恵比寿の土地です。もともと、真の土地のオーナーである島崎 健一が老人ホームに入居したという情報をつかんできたのは「図面師」の竹下でした。

 それを島崎 健一に似ていそうななりすまし人の、「ササキ」を見つけてきたのは、「手配師」の麗子で、いかにも真のオーナーらしく、生年月日や干支などの暗記教育を施したのでした。

 そして、振興の不動産会社であり上場に備えて実績が欲しい「マイクホーム」に7億円の地面師詐欺にかけたのです。結果は、まんまと地面師詐欺は成功し、報酬はチームで分配されました。

 その後、チームは各々海外に渡航するなどして、ほとぼりが冷めるまで身を潜めていました。

 約3か月半後、次のターゲットをプロジェクトを定めるためチームは再結集します。目ぼしい案件を見つけてきたのは、竹下でした。竹下は20億~30億の無難な案件を勧めます。

 しかしハリソン山中は、せっかくだから多少難しくても大型の案件を狙おうと提案します。狙ったのは高輪ゲートウェイ駅が開業を控えていた前の好立地で市場価格100億円の物件です。

 ハリソンは躊躇するチームメンバーを説得して、この土地を狙うことに決めます。

 警視庁捜査二課は経済事犯を専門に扱う部署ですが、近年増加している特殊詐欺の捜査に追われて地面師詐欺の捜査はおざなりになっています。二課に所属する辰という定年まじかの刑事は過去にハリソン山中を逮捕したことはありましたが、起訴までは持ち込めませんでした。

 その時、味わった悔しさのため、いつかハリソン山中を逮捕したいと切望しています。恵比寿の地面師詐欺の裏にハリソン山中の影を感じます。

 拓海は竹下の部下のオロチとともに、ターゲットの土地のオーナーである川井 菜摘の監視をします。ターゲットの土地は寺院の所有で、そのオーナーである菜摘は尼僧です。

 内偵の甲斐あって、菜摘と劇団演出家の久保山が懇意にしていることが分かります。チームはこの二人の仲を詐欺の材料にすることにします。

 大手不動産開発デベロッパーの開発本部長である青柳 隆史は焦っていました。順調に進んでいるように思えた開発用地の買収交渉が頓挫しかかっていたのです。

 

 自分の人生を破滅させたのが、ハリソン山中だと知った拓海は彼に復讐すべく、指定されたジャズバーを訪れます。ハリソン山中に復讐する前に、すでに警察官を退職した辰には、これからハリソン山中に会いに行くことを告げます。

 

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