「アノード」と「カソード」について

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もうひとつの記事(「アノード」と「カソード」について~その(2)~)で別の切り口から説明を試みています。この記事と矛盾する訳ではないので、この記事で納得いかない場合は上記の記事も参照してみて頂けると幸いです。

 「アノード」と「カソード」は電気化学に置いて出てくる頻出の用語です。同じ「アノード」「カソード」という言葉は日本語では (「正極」「負極」)、(「陽極」「陰極」)とも表されます。しかし、使用される「系」によって用語が異なるため正確に理解しておかないと混乱の原因となります。「アノード」と「カソード」については電子の受け渡しという観点から説明すると理解が深まります。ここでは私が理解した範囲で解説したいと思います。

まず、初めにアノードとカソードの基本的な考えをまとめます。次にこの考えに至った考え方を示します。

アノード:配線で結ばれていない電解質(溶液)や真空空間などの場所から電子を受け取る電極

カソード:配線で結ばれていない電解質(溶液)や真空空間などの場所へ電子を放出する電極

電気化学分野での「アノード」と「カソード」について

「アノード」と「カソード」の日本語訳としては(「正極」「負極」)、(「陽極」「陰極」)とも表記されます。その日本語訳が使われるのは、その「系」が「電池」か「電池”以外”(電気分解系、めっき系、真空系)」によって異なってきます。その違いを明確に理解しておきましょう。

電池での「アノード」と「カソード」について

本来電気化学の「アノード」「カソード」は「ボルタ電池」や「ダニエル電池」を考えた方が分かりやすいのですが、ここでは日常生活でなじみのある乾電池に置き換えて考えます。電池を閉ループ回路内でのデバイスの一つと捉えれば、電池の電流が供給させる電極が+(プラス)極となります。+(プラス)極は日本語で言えれば正極になります。正極は上の章の「電池」のツリー図から判断するとカソードとなります。閉ループ回路の電流が電池に戻って来る電極はー(マイナス)極となります。ー(マイナス)極は日本語で言えれば負極になります。負極は上の章の「電池」ツリー図から判断するとアノードとなります。

次に元に戻って湿式電池(ボルタ電池やダニエル電池)の反応槽(溶液相)での反応に着目してみましょう。+(プラス)極から電流が流れるので、正極であり、上の章の「電池」のツリー図からカソードとなります。機能としては、カソードは電解溶液中に電子を放出します。ー(マイナス)極へ電流が流れ込んでくるので、負極であり、「電池」のツリー図からアノードとなります。機能としては、アノードは電解溶液中から電子を受け取ります。

別の言い方をすると、電解質溶液中に電子を供給するのがカソード電解質溶液から電子を受け取るのがアノードということになります。

電池”以外”での「アノード」と「カソード」について

電池”以外”の場合は、「電気分解系」「めっき系」「真空(プラズマ)系」が考えられます。まずは「電気分解系」と「めっき系」について見ていきます。「電気分解系」でも「めっき系」でも電池の+(プラス)極に接続されている電極が陽極となります。陽極は上の章の「電池”以外”」のツリー図から判断するとアノードとなります。機能としてはアノードは溶液から電子を受け取る電極になります。電池のー(マイナス)極に接続されている電極が陰極となります。陰極は上の章の「電池”以外”」のツリー図から判断するとカソードとなります。機能としてはカソードは溶液へ電子を放出する電極になります。

次に「真空(プラズマ)系」を見ていきます。電池の+(プラス)極に繋がれている真空管(放電管ともいう)の電極が陽極となります。陽極は上の章の「電池”以外”」のツリー図から判断するとアノードとなります。機能としてはアノードは真空中から電子を受け取る電極になります。電池のー(マイナス)極に接続されている電極が陰極となります。陰極は上の章の「電池”以外”」のツリー図から判断するとカソードとなります。機能としてはカソードは真空中から電子を放出する電極になります。

真空管については、別名陰極管や放電管の中で発生する電子線のことを陰極線と呼ばれていることと結びつければ思い出しやすいのではないでしょうか?

まとめ

再度、まとめるとアノードとカソードは次の様に考えると理解しやすいと思います。

アノード:配線で結ばれていない電解質(溶液)や真空空間などの場所から電子を受け取る電極

カソード:配線で結ばれていない電解質(溶液)や真空空間などの場所へ電子を放出する電極

ダイオードでの「アノード」と「カソード」について

半導体素子のダイオードでも「アノード」と「カソード」が出てきますので、それについてもまとめておきたいと思います。ダイオードでも電気化学の「アノード」と「カソード」の考えが応用できると思います。基本的な考えをまとめてみます。

アノード:配線で結ばれていないPN接合部分のデバイスから電子を受け取る電極

カソード:配線で結ばれていないPN接合部分のデバイスへ電子を放出する電極

電池の+(プラス)極に繋がれているダイオードの電極が陽極となります。機能としてはアノードはダイオード内で電子を受け取る電極になります。電池のー(マイナス)極に接続されている電極が陰極となります。機能としてはカソードは真空中から電子を放出する電極になります。

上記の図では、+電荷を持つ粒子をホール(正孔)として描いていますが、これは便宜上の記述で、物理的に+電荷をもつ粒子は存在しません。実際に物理的に存在する粒子は、-電荷を持つ電子だけで、バルク材の中から電子が移動してなくなると相対的に+になるので、それを+粒子とみなしてホール(正孔)と呼んでいます。そういう意味からも、ダイオードのような半導体素子のアノードとカソードの概念も電子の受け渡しの観点から説明することが可能となります。

 また電子部品単体(ディスクリート)でのアノードとカソードの見分け方ですが、端子の長い方がアノードで端子の短い方がカソードになります。

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