高分子化合物

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 この記事は「よくわかる最新高分子化学の基本と仕組み 現代社会に不可欠な高分子を知る 図解入門 Visual Guide Book」 齋藤 勝裕/著 秀和システムを参考にさせて頂いています。

高分子の化学的分類

天然高分子:自然界に存在する高分子で、主に生体の体を作っています。よく知られたものに デンプン、セルロース、タンパク質があります。DNAやRNAなどの核酸も天然高 分子です。
合成高分子:化学合成によって作った高分子です。以下のように分類できます。

ゴム:天然にもありますが、現在使われている主なゴムは合成品です。ゴムは力を加えると伸び縮みすることが特徴です。
熱硬化性高分子:熱可塑性高分子と反対に、加熱しても軟らかくならず、更に過熱すると木材のように焦げてしまう高分子です。お椀などの食器、鍋の取っ手、電気の コンセントなどに使われます。
熱可塑性高分子: ポリエチレンのコップにお湯を入れるとグニャリと曲がってしま います。このような高分子を熱可塑性高分子といいます。プラスチックや合成繊維 の多くは熱可塑性高分子です。

合成樹脂: いわゆるプラスチックです。インスタントカップ麺の入っている発泡ポリスチレン、家電製品のキャビネット、バケツなどなど、多くのものがあります。一般には熱硬化性樹脂もプラスチックに含めることがあります。
合成繊維: ナイロンやポリエステルなどと呼ばれる、合成的に作った繊維です。科学的には合成樹脂と全く同じものです。形状が違うだけといってよいでしょう。

融点とガラス転移点

 ガラス転移点とは、その温度を下回ると高分子の性質が変わってしまう温度のことです。

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 1980年代くらいに、自動車用のオイルとして、Mobil-1のテレビCMがありました。今でも、YouTubeなどで見ることができると思います。

 その映像を見ると、マイナス40°の世界では、バナナで釘が打て、新鮮なバラも粉々になるそうです。バラは、植物なので、セルロースを主体とした有機物ですが、セルロースもテ天然高分子になります。つまり、高分子は天然であれ合成であれ、ある温度以下になると物理的な性質が変質してしまうこがあるということです。

 その温度が、ガラス変移点になります。
[OT]e

高分子における分子の捉え方

 物質を半分に切って繰り返していくと、最後にはこれ以上分けら れないが限界、つまり最小の単位があるはずで、これを「分子」としました。 例えば、水が水としての性質を保つために必要な最小の大きさが あり、これを「水分子」とした。 つまり、分子とは「それ以上分けると性質が変わってしまう、物質の 最小単位である。

 そして、分子はさらに小さな構成要素である「原子」からできている。 水分子は、酸素原子1つと水素原子2つからできている。 しかし、1つの水分子を1つの酸素原子と2つの水素原子に分 けてしまったら、これはもう水ではない。

上記の説明によると、分子は元の性質を残したものの墨汁最小単位といえる。
例えば、高分子のポリエチレンの場合、エチレン (H₂C=CH2)分子单体と、 ポリエチレン分子(H₂C=CH₂)では、性質が異なると思われる。 1の数がどこからポリエチレンになると明確には言えないが、分子量 でいえば、数万のものがポリエチレンの性質を持つと考えられます。 また、後述する(分子量 vs 物性(強度))グラフのM。以上の分子量 を持つ、エチレンの重合体をポリエチレンの分子と考えていいのではないか? そして、最初の数万の分子量を持つポリエチレン分子を半分に切っても、そ の半分の分子量のポリエチレン分子の性質が、最初の倍の分子量と変わらな けば、半分の分子量のポリエチレン重合体も、同じポリエチレン分子と思われる。

 ポリエチレンは炭素と水素だけでできた炭化水素の一種であり、気体のメタンや 液体のガソリンの仲間です。違いは分子の大きさ、つまり分子量であり、メタンの 16、ガソリンの100程度に比べてポリエチレンは10万以上と桁が2つも3つも 違っています。分子量の大小は物質の性質にどのように影響するのでしょうか。 分子量と沸点・融点 炭化水素の性質を大きく左右するのは炭素数であり、メタンやブタンなど、すな わち炭素数1~4個のものでは気体であり、それ以上、10個程度のものでは液体で あり、20を越えるとクリーム状を経て固体となります。

 しかし、炭素数が大きくな るとその融点は必ずしもハッキリしなくなります。 上図は炭化水素の分子量とその融点の関係を表したものです。分子量が小さい間 は両者の間によい比例関係がありますが、分子量がある程度以上大きくなると、融 点を表す曲線は横ばいになり、やがて融点に幅ができる、つまり明確な融点が測定 できなくなります。固体と液体の境界が不明確になってくるのです。 これは炭素系化合物の特徴であり、炭素数が増えると、同じ炭素数でありながら 構造式の異なる分子、すなわち異性体が増えことによります。そのような場合には 異性体の分離、すなわち純粋物質を得ることが困難になります。物質が明確な融点 を示すのはその物質が純粋であることの証明にも使われるくらいです。つまり不純な混合個体は明確な融点を示さないのです。

 分子量と高分子の物性 下図は高分子の物性と分子量の関係を表したものです。グラフの線は分子量の増 加と共にゆっくりと上昇し、高分子性がハッキリと現れることを示しています。しか し分子量が更に増えるとグラフの上昇傾向は鈍化し、やがて変化しなくなります。 このようなS字型のカーブは一般にシグモイドカーブといわれ、自然現象、特に生体関係にはほとんど必ず現れるカーブです。このグラフによれば分子量がMoよ り小さい分子は高分子性を持っていません。つまり、低分子と高分子を分ける境界 はM。の辺りいうことです。それを超えると急激に高分子の性質が現れます。しかし それも分子量がMsを超えると頭打ちになることがわかります。

ケイ素高分子の種類と性質

・高分子には有機物以外のものもあります。前項で見た炭素繊維も有機物とはいえ ません。有機物以外の繊維としてよく知られているのがケイ素Siを用いたケイ素樹 脂です。ケイ素Siを含んだ高分子には何種類かあります。

・ポリシロキサン

ケイ素原子と酸素原子が交互に並んだ結合、つまり-Si-O-Si-O-・・・結合をシロキ サン結合、あるいはシロキサン骨格といい、このような結合でできた高分子をポリ シロキサン、シリコーン、あるいはシリコンといいます。一般にケイ素樹脂という場 合は、このポリシロキサンを指すことが多い状態です。 ポリシロキサンは柔軟で弾力性に富み、耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性が強く、耐熱 性は400℃を超えるものもあります。その上、絶縁性が高いという優れた性質をも ち、電気関係の被覆材にも用いられます。
ただし、金属酸化物(塩基)の性質をもつ ため強酸に対しては弱く、変質(白化、脆化)させられることがあります。

Si-O単位が2千個以下のものは液体であり、シリコンオイルと呼ばれて熱媒体と して利用されます。また摩擦係数が低いので潤滑剤としても用いられます。Si-O単 位が5千~1万個程度のものはゴムの性質をもつので、加硫してシリコンゴムとし て薬品瓶の栓、医療用手袋などに使われる他、歯科医療の型取り剤、あるいは通気 性を利用して人工心肺装置の膜としても利用されます。

親水性ゲルにシリコーンを配合したシリコーンハイドロゲルは、酸素透過型コン タクトレンズや、形成外科・美容整形手術(豊胸術)の充填剤などにも用いられてい ます。

・ポリカルボシラン
主鎖が-Si-C-とケイ素原子と炭素原子が1個置きに並んだ高分子です。現在のと ころ高分子そのものとしての用途より、炭化ケイ素 (SiC) 膜の前駆体として利用さ れています。つまり、SiC膜をコーティングしたいものの上にこの高分子を塗り、そ の後数百℃で加熱することによりSiCに変化させるのです。炭化ケイ素はカーボラ ンダムとも呼ばれ、硬度、耐熱性に優れ、半導体の性質も持つため、電子素子の素材 として利用されます。

・ポリシラザン
主鎖が-Si-N-とケイ素と窒素Nが交互に並んだ高分子です。大気中で焼結すると シリカ SiO2に変化するのでシリカコーティング剤として利用されます。

ナイロン6,6 、ナイロン6

 ナイロン6,6

1935年アメリカの若い化学者カロザースによって発明され、1938年に発表されたナイロンは、人類が作った最初の合成繊維として画期的なものでした。

カルボン酸とアミンはそれぞれの分子から水分子がとれて、結合反応をします。このような反応をアミド化といい、アミド化でできた化合物を一般にアミドといいます。

このように2個の分子から水が取れて結合する反応を一般に脱水縮合反応といいます。

ナイロンはアジピン酸とヘキサメチレンジアミンという二種類の単位分子が脱水縮合反応して交互に結合してできた高分子です。

アジピン酸はカルボン酸で、カルボキシル基- COOHを2個持っています。

カルボキシル基:  

これを持つ化合物は、酸性であり、一般にカルボン酸、あるいは有機酸と呼ばれる。

一方、ヘキサメチレンジアミンはアミンでアミノ基ー NH₂を2個持っています。

この二種類の置換基は互いの間から水H₂Oを除く形で結合します。

そのため、ナイロンは一般にポリアミドの一種といわれます。

ナイロンを構成する2種の単位分子は何れも6個ずつの炭素を持っているのでナイロン6.6と呼ばれることがあります。

ナイロン6

それに対して、一分子内にカルボキシル基とアミノ基の両方を持った分子からできた高分子をナイロン6といいます。

ナイロン6は日本人の発明です。 一般にナイロン6.6は絹の肌触り、ナイロン6は木綿の肌触りといわれます。

つまり、

ナイロン6,6 = [カルボキシル基2個を持ったカルボン酸]+[アミノ基2個を持ったアミン]の脱水縮合反応からなるポリアミド

ナイロン6=[カルボキシル基1個を持ったカルボン酸]+[アミノ基1個を持ったアミン]の脱水縮合反応からなるポリアミド

ということになります。

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