この記事は、「 トコトンやさしい表面処理の本 東京都立産業技術研究センター/編著 日刊工業新聞社」を参考にさせて頂いています。
表面処理とは
表面処理は、材料表面を何らかの方法で処理加工し、 表面特性を改変する、もしくは新たな特性や機能を付与する方法です。
基材(鉄、ステンレス、アルミ等)は求める特性や機能を決定しますが、必ずしも基材の特性 ・機能だけで、求める特性を満足できるわけではありません。
そこで、求める特性を満足するための手段として、表面処理を採用します。
表面処理の加工方法は、除去加工と付加加工の2つに分類できます。
除去加工:材料表面の付着物もしくは材料そのものを削る方法で、付加加工のための前処理として利用することもあります。
除去加工に分類できる表面処理の種類として、洗浄、研磨、エッチングなどが挙げられます。
付加加工:表面の特定部分の組成、構造などを改変する方法、表面の特定部分を異種/同種材料で付加的に被覆する方法で、多岐にわたります。
加工現象の違いにより、以下の5つに大別できます。
①番目:構造を変えることで改善する方法で、高周波焼入れなどが該当します。
表面組成は変わりませんが、急速加熱冷却された表面のみ硬化する(構造が変化する)ことで耐摩耗性が向上します。
➁番目:同一/異元素の注入・含浸などで組成・ 構造の変化により改善する方法で、浸炭処理や窒化処理などが該当します。
同一/異元素が拡散浸透 することで表面の耐摩耗性、耐疲労性が向上します。
③番目:化学反応物を生成することで改善する方法で、化成処理などが該当します。陽極酸化(アルマイト)は酸化物層を形成し、耐摩耗性や耐食性が向上します。
④番目:基材と異なる処理層を形成することで改善する方法で、該当する表面処理の種類が最も多く、めっきや塗装、PVDなどが該当します。
⑤番目:基材と異なる処理層を形成し、基材との境界で元素の拡散を生じることにより改善する方 法で、溶融亜鉛めっきや熱CVDなどが該当します。
電子とイオン
物質の基本である原子は、原子核と、そ の外側で一定の軌道(電子核)を回っている電子で構成されています。
原子核は陽子(プラス)と中性子からなり、この陽子の数が各元素の原子番号を示しています。
電子(マイナス)の数はこの陽子の数に等しいため、通常の原子は電気的に中性です。
原子核に最も近い最内側の電子核をK核と言い、電子を2個まで保有できます。
電子の数が3個以上になると、K核の外側にし核(最大電子数8個)、M核(最大16個)、N核(最大32個)、0核(最大50個) の順に電子核が増えていきます。
原子に何らかの外的エネルギーが加えられると、電子が飛び出します。このとき、陽子の数よりも電子の数が少なくなることから、原子はプラス(+)の電荷を持つことになります。
このプラスの電荷を持つ原子のことを陽(十)イオン、飛び出した電子のことを自由電子と呼びます。
なお、自由電子を受け取った原子はマイナス(一)の電荷を持つことになり、陰(一)イ オンと呼びます。
気体物質は不導体であるため、電圧を印加しても通常は何も起こりません。
しかし、 高電圧を印加すると電子が叩き出されます。この現象を電離現象(放電現象)と言います。
真空とは
真空とは、大気圧より低い圧力の空間を指します。
また、圧力の程度によって
低真空 (1×E5~1×E2Pa)、
中真空(1×E5~1×E-1Pa)、
高真空(10~1022Pa)、
超高真空(10 以下)の領域に分類できます。圧力範囲と真空領域の関係についてはJIS Z 8126-1(1999) に規定されています。
一方、圧力は相当不純物量として表すことも可能 です。例えば、中真空領域である10のときの相当 不純物量は1・34ppmで、高真空領域である102のときの相当不純物量は1・34×10ppmです。圧力 によって分類した領域が量的な真空であるのに対して、 相当不純物量によって分類した領域のことを質的な 真空と呼びます。
真空は、物質に対して光輝加熱、②表面清浄、 ③脱脂、④脱ガス、⑤蒸発などの作用を促進します。
その結果、大気圧では到底得られないさまざまな効 果をもたらします。そのため、真空を利用した表面処理が多く存在します。
真空を利用する目的として、表面処理に伴う酸 化を防止することが挙げられます。酸化防止に対して、 超高真空が有利であると言えます。しかし、量的な超高真空を得るためには、真空容器や排気系の気密 性を保つことが必要です。また、ターボ分子ポンプや イオンポンプなどが必須となるなど、大幅なコスト増 につながる可能性があります。一方、真空を利用し た表面処理の中にはプラズマを同時に利用するものが 多く存在することから、超高真空よりはむしろ中真空から高真空で処理するのが一般的です。
表面処理に真空を上手に利用するには、量的より むしろ質的な超高真空をいかに確保し保持できるか が重要です。不活性ガス(々、他)や中性ガス(N)を 併用し、質的な超高真空を確保する方法が常套手 段となります。この場合、適度に量的な真空を保ち ながら質的な超高真空を達成できます。
真空については、独立した記事(「真空」とは)でも書いていますので、
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