「実録バブル金融秘史」のレビュー・書評

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  今回レビューするのは、「実録バブル金融秘史」恩田 饒 著 河出書房新社です。

 著者は、東京大学卒業後大和証券に入社して、MOF担(モフたん:大蔵省担当)などの要職を務めてきた人物です。金融マンとして、バブルをとおした日本経済の栄華盛衰を見てきた人物として、その1ページを後世に書き残す使命のようなものを感じて本書をしるしたそうです。

 本書冒頭の「はじめに」で記されているように、バブルのピークは1989(平成元)年12月29日に日経平均株価が3万8915円87銭(3万8957円44銭)という市場最高値を付けた時です(※2024年2月22日に日経平均更新)。それ以来、日経平均は2023年まで一度もその水準を回復しておらず、失われた30年と言われています。

 証券会社の雄と言えば、野村証券が想像しますが、かつての名門は山一証券だった時代が長く続いたそうです。

 バブルの引き金になった要因の一つに世界経済のイベントとして、プラザ合意があったそうです。1985(昭和60年)年9月22日にニューヨークのプラザ・ホテルでドル高是正に関する合意です。これを一つの契機として日本はバブル経済に突入していきます(P.43)。

 このプラザ合意以降、為替レートは1985年7月には150円台まで急騰したらしいです。その当時は1ドル=150円が円高だったのですね。いまでは、1ドル=150円は超円安なので為替レートの円高・円安は相対的なことだということが分かります。

 前述したように株価は、1990年初頭以来低迷てしにますが、本書ではバブルの期間を1986年12月から1991年2月までと考えています。(P.45) バブルの象徴の一つとして上げられるのがNTT株の上場でしょう。NTT株は上場時の売り出し価格が119万7000円だったものが、最高値で318万円にまでなったそうです。

 バブル時には、色々な買収案件もニュースとなりました。1987年(昭和62年)には安田火災海上保険(現損保ジャパン)がゴッホの「ひまわり」を53億円で落札したり、1990年(平成2年)には三菱地所がニューヨークのロックフェラーセンターを2200億円で買収しています(P.60)。

 筆者はリクルート事件にも言及しています。リクルート事件は、1988年6月18日の朝日新聞が「川崎市助役へ1億円利益供与疑惑」というスクープ記事が発端となったようです。

 消費税導入の経緯も記されています。消費税は竹下登内閣によって1989(平成元)年4月1日から導入されました。

 また、バブル絶頂期には邦銀の力も絶大で、これを警戒した欧米の銀行業界も邦銀を規制するためにBIS規制の自己資本比率8%というルールを作って牽制したらしいです。このルールが後々邦銀の凋落を招いた元凶になったらしいのです。

 ある時から「大和証券SBCM」と「大和証券グループ本社」という2つの表示が出てきて、その内「大和証券SBCM」が「大和証券SMBC」に変わった時があり、この3社は何が違うのだろうと思っていたのですが、本書でそれが説明されていました。

 「大和証券SBCM」というのは、1999年に設立された大和証券と住友銀行の合弁企業で事業内容は主にホールセール(法事営業)を主体としていたようです。「SBCM」とは、「スミトモ・バンク・キャピタル・マーケッツ」という意味のようです。その後、2001年に住友銀行とさくら銀行が合併し「三井住友銀行」になったため、「スミトモ・ミツイ・バンキング・コーポレーション」となったことから、「SMBC」に社名変更したようです。

 「大和証券グループ本社」というのは、主にリテール(個人営業)を主体にしていたようです。

 

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