小説「クスノキの番人」の書評・レビュー

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(※内容について本文で一部言及しています。未読の方はご注意下さい。)

 今回の書評は「クスノキの番人」東野圭吾 著 実業之日本社です。東野圭吾さんと言えば、ミステリーを思い浮かべますが、この作品は他の作品とはちょっと趣きが異なります。伏線なども張ってあり、ミステリー的な要素もなくはないのですが、殺人事件が起こったりするわけではありません。

 むしろ読後に爽やかな気分になるハートウォーミングな作品です。不可思議な現象が起こり、過去に亡くなった人と心の交流ができたりする物語としたは、「コーヒーか冷めるまでに」や「ツナグ」に近いものがあるかも知れません。似たような作品があるという事は、こういうジャンルもあるということなのでしょう。いずれ、映像化されるかも知れません。

 小説の内容ですが、この作品は2つの大きなストーリーが相互に絡みあいながら、一つの大きな小説として進んでいきます。

 一つ目のストーリーが、主人公の直井玲斗(なおいれいと)を取り巻く、家族関係やクスノキの番人の役割が分かっていく、ストーリです。

 二つ目のストーリーが、クスノキに度々祈念の訪れる佐治 寿明氏の不可解な行動とその行動に疑問を抱いた娘の佐治 優美(ゆうみ)が父親の行動の謎を解き明かしていく、ストーリーです。

 主人公は直井玲斗という20代前半の青年になります。変なめぐりあわせから、月郷神社(つきさとじんじゃ)のクスノキの番人の担い手になります。クスノキの番を人とは月郷神社に植わっている巨大なクスノキで、満月と新月に祈念する人達の管理をする人のことを指します。

 ある日の満月の夜に佐治寿明という人物が祈念に月郷神社を訪れます。それを付けるような人影を見た玲斗はその人物の後を追います。その人物は祈念者の娘の優美(ゆうみ)でした。父親が時々夜になるとどこかに出掛けているのに不信感を覚え、後を付けたところ月郷神社によくきていることを突き止めたのでした。

 罪悪感を覚えながらもクスノキで祈念中の佐治寿明の様子を覗いてみると、寿明は鼻歌を歌っているのでした。

 優美に詳しい事情を聴くと、寿明は自営業の工務店も日中どこかに出かけているが多いということです。

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