今回レビューするのは、「半導体有事」湯之上隆 著 文藝春秋社です。

最近は、TSMCが熊本にjasmを作ったり、ラピダスに日本政府に数千億円出資したりと世間の耳目を集めているようです。テレビなどでよく聞く論調では、1980年代には日本は半導体の世界市場では、高いシェアを誇っていたのに、2000年代以降は凋落してしまったとの意見をよく聞きます。
しかし、あの年代でも生産量の多くは、DRAMでした。現在の半導体市場は、DRAMだけではなく、NAND Flashメモリーやロジック半導体など多岐にわたっています。
特に今注目されている台湾のtsmcなどは、メモリーは生産しておらず、ロジックICのみを受託生産しています。日本の半導体産業の衰退を政府の失政のせいにする声も上がっていますが、特に日本政府の失政がなかったとしても日本の半導体産業は衰退していたような気がします。
ただし、日本の半導体そのものは衰退しましたが、まだ半導体製造装置は検討しています。
日本のステッパーメーカーの凋落について
その一方、半導体製造装置の中でも、ステッパー(露光装置)はかつてニコンとキヤノンがほぼ市場を独占していましたが、現在のEUV(極端紫外線)市場ではほぼオランダのAMSLが市場を独占しています。
もともと、日本は光学メーカーが強く、特に半導体産業の黎明期には、ニコンがステッパー市場を牽引していたらしいです。そこへキヤノンが参入してきて、猛追しあと少しで、シェアでニコンを抜くかというところまで来て、ASMLにニコンもキヤノンもシェアを取られたようです。
ASMLのステッパーの光学系は、カール・ツァイスが担当しているそうですが、やはりステッパーほどの高度な光学技術を扱えるのは、ニコン、キヤノン、カール・ツァイスなどの光学機器に強いメーカーでなければ太刀打ちできないのでしょうか?
ASMLが初めて日本のデバイスメーカーのステッパーを納入したのは、2001年ごろにエプソンに納入したのが初めてだと当時の雑誌の記事で読んだ記憶があります。
その後、ASMLが台頭してきたときも、私はまだ楽観視している部分がありました。何よりキヤノンは後発からの追い上げがすごいからです。
カメラの一眼レフでは、ニコンの「F」や「F2」といったフラッグシップモデルが先行していて、特に報道用カメラとしての信頼は抜群だったらしいです。
その後、キヤノンも「F-1」という機種で報道カメラ部門に参入します。その後、報道カメラの分野でどんどんニコンを追い上げていきます。
次の転機は、35mmカメラのオートフォーカス(AF)です。この分野で先行したのは、ミノルタカメラ(現:コニカミノルタ)でした。ニコンなどが挽回しようとすぐにAFカメラを投入しますが、キヤノンが35mm一眼レフでAFで参入したのは、かなり後になってからでした。
しかも、多くのメーカーがレンズを動かすためのモーターをカメラボディ側に持たせたのに、キヤノンはレンズ側にモーターを搭載するという方法を取ります。
P.35,P.51,P.59,P.71,P.79,P.83,P.90,P.108,P.128,P.137,P.145,P.169,P.190,P.230,P.236,P.238,P.240
コメント