潜熱
たとえば、氷を熱する場合を考えましょう。
ここで-10℃の氷を持ってきましょう。これを熱してみます。氷の温度はどんどん上がっていって、ついには0℃になります。しかし、それ以上はしばらく熱しても温度が上がらなくなるのです。
なぜかというと、このとき、熱は「氷を水にするのに使われている」からです。
固体というのは分子が整然と並んでいる状態です。固体の結合力はかなり大きいものです。ですから、固体から液体へと変化するためには、分子と分子の結合を引き離すエネルギーが必要となります。このエネルギーが潜熱です。
氷は0℃で融け始めますが、この温度を融点といいます。この融点において、氷をすべて水に変えるのに必要なエネルギー(潜熱)を融解熱といいます。
氷がすべて水に変わってしまえば、その後、温度は上昇をはじめます。
また、いわゆる蒸発熱(液体を気体にするために必要なエネルギー)は、 融解熱よりもかなり大きい値です。気体というのは完全にフリ一の状態ですので、たくさんのエネルギーが必要になるためです。
水でいえば蒸発熱は1gあたり550cal (1calは水1gを1℃上げる熱量)ですから、 単純にいえば水の温度が550℃上昇する熱量に相当します。融解熱はその約7分の1の80calです。
ちなみに、温度に反映されないで、熱があたかも物質に吸い込まれて、 潜んでしまうように見えることから、潜熱と名づけられました。
潜熱 :潜熱(融解熱、蒸発熱(気化熱)、昇華熱など)

熱容量と比熱
熱容量について
高温の物体と低温の物体を接触させると、高温の物体の温度はしだいに下がり、低温の物体の温度はそれにつれて上昇します。このとき、「高温の物体から低温の物体に熱が移った」、と定義します。この現象を「熱伝導」といいます。
やがて、両者の温度が一致して、熱の移動はなくなります。この状態を熱平衡といい、このような平衡状態が存在することを、熱力学の第0法則とよぶことがあります。
定量的で数学的な熱力学をつくりあげるために、ジョセフ・ブラック (Joseph Black, 1728~1799)は「熱容量」や「潜熱」の概念を初めてつくりあげ、また、熱量の測定法を確立しました。
「熱容量」は、また「ヒート・キャパシティ」とも言います。
18世紀は、温度と熱の区別さえ、はっきりしていませんでした。しかもそのころの物理学はニュートンの影響を強く受けて、加熱した物質の密度に反比例して温度が上がる、と信じ込まれていたくらいです。
具体的にいえば、水銀の密度は水の密度の13.6倍だから、比熱(物質1gを1℃上げるのに必要な熱量)も水の比熱の13.6倍になる、と考えられていたのです。
実際に温度計を使って測ると、結果は逆になります。
ブラックの講義録によりますと、体積2の水と体積3の水銀を下図 (a)のように接触させると、初めの温度に関係なく、最終的に両方の温度計は中間の位置で熱平衡になります。
また、下図(b)のように、互いに同体積の水と水銀の温度差が50 ℃であれば、どちらの温度が高い場合でも水銀から30 ℃ 、水から20 ℃のところで平衡が得られました。
(a)は、体積3の水銀が失った熱量が、体積2の水が得た熱量に等しいことを意味しています。
また(b)は、水銀と水の体積が等しいとき、水銀の失った熱量と水の得た熱量の比が3:2であることを示しています。

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