(※内容について本文で一部言及しています。未視聴の方はご注意下さい。)
評価:☆☆☆☆
2019年に公開された映画のレビューです。原作も読んでいるのですが、原作は長編小説なので、これを2時間の映画に収めるのはかなり大変だったと思います。
ブルゾンちえみさんが放送局のスタッフとして、高島明石(松坂 桃李さん)に密着取材する役で出演しています。ブルゾンちえみさんは現在は藤原しおりさんという本名で芸能活動をされているとのことでこれも時代のスピード感を感じさせます。
栄伝亜夜にまつわる回想シーンではなぜか雨が降っていて、黒毛の馬が出てくるシーンが随所にあります。何かのメタファーだと思うのですが、結局何か分かりませんでした。原作にもなかったシーンだと思います。
原作小説を読んでいる時に失敗したなと思った出来事がありました。半分ぐらいまで読み進んだところで、ぱらぱらと何とはなしに残りのページをめくっていたところ、最終ページが目に入ってしまいました。最終ページにはこのコンテストての順位結果が載っており、それを見たことで一種のネタバレ感を覚えてしまいました。
映画について
映画は、第10回 芳ヶ江国際ピアノコンクールの場面から始まります。以前、芳ヶ江国際ピアノコンクールで優勝したイ・ソンウがショパンコンクールで優勝したことで、一躍、若手ピアニストの登竜門として注目されています。
コンテスタント(コンクール出場者)の中に栄伝亜夜(松岡 茉優さん)がいます。亜夜はかつて天才ピアニストと呼ばれカーネギーホールでコンチェルトまで弾いたこともありますが、母親の死をきっかけにコンサートからは遠ざかっています。このコンクールに再起をかけています。
まずは、一次審査から始まりましたが、亜夜の前に演奏していたのは、風間 塵(鈴鹿 央士さん)でした。塵は、天才ピアニスト、ユウジ・ファン=ホフマンからの強い推薦により、本コンクールに出場しました。
審査員のナサニエル・シルヴァーバーグの秘蔵っ子のマサル・カルロス・レヴィ・アナトール(森崎ウィンさん)も有力候補の一人です。
映画の中では、亜夜の母親が亜夜てマサルのビアノ教師として設定されていましたが、原作では二人のピアノ教師は亜夜の母親とは別にいたと思いますので、この設定は映画の中だけのものではないでしょうか。
高石 明石(松坂 桃李さん)は、他のコンテスタントと違い、子供もいる既婚者で岩手の楽器店で働く傍ら、年齢制限ギリギリでコンクールに挑みます。他のコンテスタントがほとんどが音大生の中、仕事と家庭の音楽を両立させなければならないハンディを背負っての参加です。
一次予選は、4人ともクリアします。
序盤の課題曲「春と修羅」で、マサルが電子ペーパーの楽譜を使い、フットスイッチでページを切り替えていました。これが今のクラシック奏者の演奏スタイルなのでしょうか?同じことは、タブレット端末でもできると思ったのですが、タブレット端末は自家発光するのでステージ上で演奏者の顔に光が写り込んでしまうのであまりよくないのかなと思いました。
ただ電子ペーパーは、残像が残る場合があるのでピアノ演奏のようにリアルタイム性が求められる分野には問題があるような気がしますが、どうなのでしょう?
課題曲は宮沢賢治の「春と修羅」にインスパイアされて作曲された曲らしいのですが、原作の「春と修羅」の中にある「あめゆじとてちてけんじや」の一節は、かなり有名な一節らしいのですが、恥ずかしながらこの映画を観るまで知りませんでした。
クライマックスは最終選考でしょう。各コンテスタントがオーケストラと協奏曲を共演して審査されます。オーケストラの指揮者は小野寺昌幸という人物ですが加賀丈史さんが厳しい(いじわる)な指揮者を演じています。
マサル、塵と順調に演奏が続いて行きますが、亜夜は最終審査を前にしてピアノを弾くことの意味を見失ったようで、コンテストを棄権するようにコンテスト会場から去って行こうとします。そこに突然ピアノが出現し、前述したように雨だれや黒毛の馬が出てきますが、意味を汲み取ることが出来ませんでした。母親との記憶を思い出し、ピアノを弾く意味を再度見出した亜夜は土壇場でコンテストの最終選考に出場し、オーケストラとの共演を果たします。
コンテストの結果準位は、1位:マサル、2位:亜夜、3位:塵となります。2次予選で落選したと思われていた高島明石ですが、奨励賞と菱沼賞を贈られます。
風間塵役の鈴鹿央士さんは本作がデビュー作なのですね。原作小説の風間塵のイメージにピッタリですね。この邦画のページでもレビューしているロストケア にも出演されていませすね。
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