映画「シン・ゴジラ」のレビュー・感想

Movies/DVDs

(※内容について本文で一部言及しています。未視聴の方はご注意下さい。)

評価:☆☆☆☆☆

2016年に公開された庵野秀明総監督、樋口真嗣監督の「シン・ゴジラ」の映画レビューです。総理大臣役として、大杉漣さんが出演されています。大杉さんのご冥福をお祈りいたします。

 庵野秀明監督と言えば、ご存知「新世紀エヴァンゲリオン」の監督ですが、アニメ以外にも実写映画を監督されています。その最大のヒット作が本作「シン・ゴジラ」です。

 本作は実写であり、「ゴジラ」シリーズの映画ですが、そのテンポ感や挿入されるキャプションなどからアニメの「エヴァンゲリオン」を想起させます。その後、「シン・ウルトラマン」や「シン・仮面ライダー」を監督されているのですが、それらの作品は「エヴァンゲリオン」感は薄れた感があります。

映画の内容について

 冒頭東京湾で牧 吾郎教授のプレジャーボートが発見されます。しかし、そのボートは無人で発見されます。牧 吾郎教授の身に何かのあったようで、それが伏線なのかなと思いましたが、その伏線は映画後半に回収されます。

 映画のストーリーは、東京アクアラインの天井部分が崩落することから始まります。多くの閣僚、官僚が海底火山の噴火や熱水孔噴出の噴出で決着をつけたいと思っている中、若手官僚で内閣官房副長官の矢口蘭堂(長谷川 博己さん)だけは謎の巨大水棲生物が存在する可能性を進言します。

 自衛隊による攻撃命令が決定された後、各大臣が安堵して、「どうせ生物だ。自衛隊の攻撃にはもつまい。ヤツの死骸を使った復興財源案でも考えるか」とつぶやきます。

 これに対し矢口は「先の大戦では、旧日本軍の希望的観測、机上の空論、こうあって欲しいという発想などにしがみついたために、国民に300万もの犠牲をしいました。根拠のない楽観は禁物です。」と諫めます。こういう正常化バイアスは映画の中だけの話ではないので、我々も気をつけないといけませんね。

 最初は水棲生物が陸上に上がっただけで、腕もありません。表皮も茶色くて、巨大なツチノコのようです。やがて、巨大不明生物が東京に上陸します。そのうち、動きを止めて、変態していきます。前脚も生えて見慣れたゴジラの形状に変わって行きます。

 その後、ゴジラは東京の市街地を離れ、東京湾から海に消えて行きます。

 やがて日本政府によって巨災対(巨大不明生物特設災害対策本部)が組織され、その事務局長に矢口が任命されます。その実態は、出世に無縁な霞ヶ関のはぐれもの、一匹狼、変わり者、オタク、問題児、鼻つまみ者、厄介者、学会の異端児、といった者たちの集まりです。

 そこで配られるゴジラの推定基本スペックによると、ゴジラの二足歩行時の推定身長は約60m弱となっています。新宿歌舞伎町の東宝シネマにあるゴジラのオブジェはゴジラの身長に模して作られているらしいので、あの高さは約60mということでしょうか。

 ゴジラのエネルギー源を尾頭は核分裂ではないかと推測しますが、一蹴されます。しかし、ゴジラの移動ルートで放射性物質が検知されたことからやはりエネルギー源は核分裂だということがはっきりします。

 その後、米国大統領特使としてカヨコ・アン・パターソン(石原さとみ)か矢口に会いに来ます。米国側の要望としては、牧 吾郎という人物を探して欲しいとのことです。冒頭で出てきたプレジャーボートの持ち主です。彼は数十年前から、ゴジラの出現を予想していたそうです。

 牧 教授の情報が集まった段階で、情報交換が行われます。米国側はその巨大不明生物を米国エネルギー省(DOE)は”GODZILLA”と呼んでいます。牧 教授が名付けていたのは「呉爾羅」です。これ以後、巨大不明生物の名前は、「ゴジラ」になります。

 やがて「ゴジラ」誕生の謎が明らかになります。「太古から生き延びた海洋生物が、今から60年前各国の放射性廃棄物の無秩序な海洋投棄物の放射線に耐性を持つ生物へと急速に変化した。」がDOEのだした結論です。DOEが調査分析を嘱託機関に依頼し、その調査の中心人物が牧 吾郎教授だったのでした。

 やがて、ゴジラの活動エネルギー原が明らかになります。ゴジラはおそらく体内に原子炉のようなシステムを持っていると推測されます。この原子炉システムを停止させれば、少なくとも活動は停止すると予測されます。そのための方策として、血液凝固促進剤の経口投与が提案されます。

 この作戦を「矢口プラン」と名付け、拒災対はその実現に対して動きだします。

 そうこうしているうちに、一度海に消えたゴジラが相模湾に再上陸します。しかも、身長などが大きくなっており、第4形態に進化してします。

 多摩川を絶対防衛ラインと想定し、自衛隊が総力を挙げてゴジラ殲滅作戦を決行します。しかし、自衛隊の戦闘ヘリの機関砲、ミサイル、戦車の砲撃、戦闘機の空爆を受けてもゴジラはビクともしません。

 ゴジラの都内侵入を許した政府は、在日米軍に日米安保条約に基づく、駆除協力を要請します。しかし、ゴジラの来襲から立川予備施設へ避難しようとした総理官邸の一行がゴジラの攻撃にやられてしまい、一時的に日本政府は機能不全に陥ります。

 ゴジラは東京駅付近で動かなくなりました。総理以下官房長官らも含む内閣が失われてしまい、総理臨時代理をたて暫定内閣を組閣します。

 立川の予備施設で凍結プランの準備が着々と進められます。カヨコ・アン・パターソン特使からゴジラの研究は日米の共同で行うという案が出されます。

 その後、ワシントンD.C.でゴジラの処分に熱核兵器を使用すべきだという意見が出てきます。そうこうしているうちに、アメリカと国連はゴジラに対して、多国籍軍による熱核攻撃を決定します。

 国連も人道的配慮から市民の避難を優先するだろうから、熱核兵器攻撃と凍結プランとの競争になります。

 牧教授の残した謎の紙ベースの資料が折り紙構造にすることにより解読することが分かります。ゴジラは生体機能部の分子で元素返還細胞膜で元素を変換して放射性同位元素を生成していることがわかります。

 ゴジラは水素や窒素等 陽子数が少ない物質を取り入れて細胞膜を通し、細胞内の元素を必要な分子に変換し、その崩壊熱を利用した熱核エネルギー変換生体器官を内蔵する混合栄養生物と推測できます。

 その分子構造を解析するために世界各国のスーパーコンピューターを動員して解析を進めます。

 解析の結果、正体は細胞膜自体ではなく細胞膜の活動を抑制する極限環境微生物の分子構造だったことが明らかになります。この抑制剤を同時に投与すれば血液凝固剤の性質を維持できることが明らかになります。

 自衛隊と協議した結果、作戦名は「ヤシオリ作戦」となり、実行に向けて準備が進みます。「ヤシオリ作戦」は自衛隊と米軍との共同作戦になります。

 そしていよいよ「ヤシオリ作戦」が開始されます。まずは、陽動作戦として、爆弾を積んだ無人の列車がゴジラに突っ込み陽動を試みます。

 テクノロジーの進化のスピードが速いなと実感したのは、日本国総理大臣とアメリカ合衆国大統領との電話会談のシーンです。

 ZoomやTeamでのオンライン会議は2021年ごろには一般的になっていたと思いますが、2016年公開の映画では、Polycomを使って音声のみでの会議をやっていました。僅か5年ほどで遠隔地との会議方法がこうまで変化することは庵野監督も予想できなかったようです。

ピエール瀧さんや小出啓介さんが出演させていたのですが、今シン・ゴジラは配信で見られるのでしょうか?ここれからも時間の経過のスピードを感じますね。

演出で意図したことなのでしょうが、登場人物がみんな早口で話し、キャプションの短時間が消えてしまうので映画館でリアルタイムで1回見ただけではすべての登場人物の名前や所属組織を覚えられませんでした。この映画を理解するには、自宅でDVDなり配信でじっくり見直す必要がありそうです。

 評価は、完成度の高さから、☆5つとさせてもらいました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました