(※内容について本文で一部言及しています。未読の方はご注意下さい。)
今回の書評は「ハヤブサ消防団 池井戸 潤 著 集英社」になります。ブログにアップしたのは23年5月29日ですが読み終わったのはしばらく前です。いままでも池井戸さんの作品は読んでいたのですが、これは今までの作品を少し趣が違うようです。今までの池井戸さんの作品は企業物が多く、サラリーマンの共感を得るものが多かったような気がします。
本作品の主人公は業界内で微妙な立ち位置にある専業作家で東京で創作活動を続けていくことに疑問を覚え、都会とは離れた父親にゆかりのある地方で創作活動をすること決意します。
この小説を原作としたドラマが23年7月クールで放送されるようです。そう本の帯に書かれていたので、早めに原作の内容をチェックしておこうと思って読んでみました。読み終わった頃にWebで検索してみたところ、ドラマ化は確かなようですが、どこの局でやるとも主演が誰かという情報もなかったような気がします。最近久しぶりにWeb検索してみると、テレビ朝日で中村倫也さん主演でドラマ化されるようです。
内容はというと中部地方にあるハヤブサ地区に前述したような業界内で微妙な立ち位置にある専業作家 三馬太郎が移住してそこで作家業に専念するところから始まります。今まで東京でしか暮らしたことのない三馬太郎にとって地方生活は新鮮な反面、その地方独特の風習に戸惑いながらもハヤブサ地区の人々の優しく飾らない人柄になじんでいく様が描かれています。
途中、読んでいて思わず笑ってしまったのは、ハヤブサ地区の人々に三馬が自己紹介する場面があるのですが、そこで自分は小説家だといいます。その際、「小説家が自分で小説を書いていると自己紹介する時ほど情けないものはない」と独り言ちます。そのシーンを読んである有名作家(〇〇さんとします)がまだ若手で売れていない時のエピソードを思い出してしまいました。その作家が飲み屋で女の子と話していた際に彼が小説家と分かった時にその女の子から「今度〇〇さんの本買って読むからさ、ペンネーム教えてよ」と言われたことを思い出しました(その小説家はペンネームではなく本名(〇〇)で小説を書いていました)。
しかし、このまま話が進んでしまっては、ミステリーにならないので、事件が起こります。連続不審火事件です。この連続不審火事件がハヤブサ地区で営業活動している太陽光パネル事業会社と結びついていきます。
後半になって事件が動きます。前述の太陽光パネル事業会社とあるカルト教団が事件に関与していることが分かってきます。このカルト教団はオウム真理教をモデルにしているのでしょう。徐々に事件の全貌が明らかになっていくのですが、登場人物が多く、過去の経緯まで絡んでくるのでこのあたりはなかなか頭に入ってきませんでした。本書の冒頭に登場人物リストがあるのですが、リスト以外にも簡単な相関図のようなものでもあれば理解の助けになったのではないかと思います。
最後の場面は郷愁を誘う描写がされていて読んでいてグッとくるものがありました。
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