小説「ロスト・ケア」の書評・レビュー 

Books

(※内容について本文で一部言及しています。未読の方はご注意下さい。)

今回取り上げるのは、「ロスト・ケア 葉真中 顕 著 光文社」です。映画ロストケアの原作となった小説です。

映画の「ロストケア」のレビューはまた、日を改めて書きたいと思います。
少し気になったのですが、本レビューの小説の題名は「ロスト・ケア」と中黒が入っているますが、映画の題名には「ロストケア」と中黒が入っていません。これには何か意味があるのでしょうか?

映画を見てから原作である本書を読んだのですが、映画はかなり映画用に脚色されているようです。ただ、私は映画の原作が小説であった場合、原作に忠実である必要はないと思います。小説と映画は別作品だと思いますので、それぞれで評価するべきだと思います。

話を小説に戻すと、小説ならではの叙述トリックが使われています。最初に小説を読んでいたら犯人を間違えていたかもしれません。

この小説は公募の日本ミステリー文学大賞新人賞の受賞作です。公募の新人賞としては、非常にレベルの高い作品ですね。著者の葉真中 顕さんは今作以前にも児童文学や漫画の原作にも携われたことがあるようで、非常に手練れた感じでした。

この小説は日本の介護状況が置かれた現状を深くえぐった作品であり、貴重な作品だと思います。肉親の介護に疲れる人たちの描写が生々しく、親の介護につかれた娘が「地獄だ」とつぶやく場面などは、私もいずれ介護に直面するだろうことを想像すると他人事とは思えません。私の身近にも介護の窮状に直面している人を知っているだけに身につまされる小説でした。

コメント

タイトルとURLをコピーしました